別々の話に見えて、実は一緒に進んでいくことが多い変化です
こんにちは。西宮/東京港区にあるマシンピラティス専門スタジオ「heso pilates」でインストラクターをしているJacquinです。60代以降のお客様から、こんなお声をよくいただきます。
「最近、筋肉が落ちてきた実感があります」
「椅子から立ち上がるのが、以前よりしんどく感じます」
「健康診断で、骨密度が低いと言われました」
「転ぶのが怖くて、外出が減ってしまいました」
「筋肉が落ちる」ことと「骨が弱くなる」ことは、別々の話のように思われがちです。ですが、この二つは同時に進みやすく、お互いに影響し合っていることが分かってきています。今日は、サルコペニア(筋肉の減少)と骨粗鬆症(骨密度の低下)のしくみと、そのつながり、そしてピラティスでできることを、理学療法士の視点からお話しします。
サルコペニアとは、どんな状態か
サルコペニアとは、加齢に伴って筋肉量と筋力が低下していく状態を指します。もともとは「筋肉」を意味するギリシャ語 sarx と、「喪失」を意味する penia を組み合わせた言葉で、現在では単なる老化現象ではなく、一つの疾患概念として扱われています。
筋肉のたんぱく質は、常に分解と合成を繰り返していますが、年齢とともに合成する力が落ちていきます。加えて、活動量の減少や、たんぱく質摂取量の不足、慢性的な炎症、ホルモンバランスの変化なども、サルコペニアの進行に関わることが分かっています。筋肉量の減少は40歳前後から少しずつ始まるといわれ、特に運動をしない期間が長く続くと、そのスピードが加速しやすくなります。ケガや入院などで一時的に安静が続いただけでも、短期間で驚くほど筋肉量が落ちてしまうこともあります。

診断の際には、握力や歩行速度、筋肉量などを組み合わせて評価します。歩くスピードが遅くなった、ペットボトルの蓋が開けにくくなったといった変化は、サルコペニアが進んでいるサインであることがあります。サルコペニアが進むと、立ち上がりや歩行といった基本的な動作が難しくなり、転倒のリスクも高まっていきます。60代・70代でのサルコペニアの割合は決して珍しいものではなく、多くの方が気づかないうちに経験している変化でもあります。
骨粗鬆症とは、どんな状態か
骨粗鬆症は、骨の密度や質が低下し、骨が弱くもろくなっていく状態です。以前の更年期の記事でもお話しした通り、骨は常に古い組織が壊され、新しい組織が作られる「骨代謝」を繰り返しており、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって、更年期以降にこのバランスが崩れやすくなります。男性の場合も、加齢に伴うホルモンの変化により、骨密度は緩やかに低下していきます。
骨粗鬆症も自覚症状がほとんどないまま進むことが多く、ちょっとした転倒や、くしゃみ・重い物を持つといった日常の動作をきっかけに骨折して初めて気づく、というケースも少なくありません。特に、背骨・手首・大腿骨の付け根は、骨粗鬆症による骨折が起こりやすい部位として知られています。背骨の骨折は、痛みを伴わずに気づかないうちに起こっていることもあり、姿勢が丸くなる一因になることもあります。
サルコペニアと骨粗鬆症のつながり ── 「オステオサルコペニア」
近年、筋肉の衰え(サルコペニア)と骨量の減少(骨粗鬆症)が同時に進んだ状態を指す「オステオサルコペニア」という概念が注目されています。
この二つが同時に起こりやすいのには理由があります。骨は、筋肉が引っ張る力や、体重を支える負荷など、力学的な刺激を受けることで、骨を作る働きが活発になります(以前の記事でお話しした「ウォルフの法則」です)。つまり、筋肉が弱くなり、身体を動かす機会が減ると、骨への刺激も同時に減ってしまい、骨密度の低下も進みやすくなるのです。逆に、骨が弱くなって痛みや骨折への不安が生まれると、動くこと自体を避けるようになり、筋肉もさらに落ちていきます。
実際、大腿骨を骨折した高齢の患者さんの約半数が、骨粗鬆症とサルコペニアの両方を併せ持っていたという報告もあります。年齢や栄養状態、慢性的な疾患なども、オステオサルコペニアの進行に関わることが分かってきており、筋肉と骨、どちらか一方だけを気にするのではなく、両方を同時にケアする視点が大切になってきています。
動かないことで進む、二重の悪循環
「筋肉が落ちてきたから、あまり無理しないようにしよう」「骨が弱いと言われたから、転ぶのが怖くて動きたくない」──こうした気持ちは、とても自然なものです。ただ、動かない期間が続くと、筋肉と骨、どちらの状態も同時に悪化しやすくなります。
動かない→筋肉が落ちる→骨への刺激も減る→骨密度が下がる→転倒や骨折への不安が増す→さらに動かなくなる。これまでの記事でお話ししてきた「かばう」ことによる悪循環と同じ構造が、筋肉と骨、二重に重なって進んでいくのが、このオステオサルコペニアの怖さでもあります。しかも、この悪循環は自覚症状の乏しさゆえに、本人が気づかないうちにゆっくりと進んでいくことが少なくありません。だからこそ、「なんとなく身体が弱ってきた」と感じた早い段階で、動き方を見直すことが重要になります。

運動と栄養、両方からのアプローチ
研究では、抵抗運動(筋肉に負荷をかけるトレーニング)が、筋肉量・筋力・身体機能の改善におおむね効果的であることが示されています。また、体重を支える荷重運動は、骨密度の維持にも役立つとされています。つまり、適切な負荷をかけた運動は、筋肉と骨、両方に働きかけることができるのです。
運動と合わせて大切なのが栄養です。筋肉の材料となるたんぱく質、骨の材料となるカルシウムやビタミンDを、日々の食事の中で意識的に摂ることが、運動の効果を支える土台になります。運動だけ、栄養だけではなく、両方を組み合わせることが、筋肉と骨を同時に守るための基本的な考え方です。
ピラティスでできること
- 抵抗運動を安全に行える:マシンのバネの抵抗を使うことで、関節への負担を抑えながら、筋肉に適切な負荷をかける練習ができます。負荷の強さを細かく調整できるのも利点です。
- 荷重運動を取り入れられる:立位でのエクササイズなど、体重を支える動きを安全な範囲で取り入れることで、骨への刺激も同時に狙うことができます。
- バランス・歩行の安定を養える:転倒予防には、筋力だけでなく、姿勢やバランスを保つ感覚も重要です。ピラティスの多くの種目が、この感覚を養う練習になります。
- その方の状態に合わせて調整できる:骨粗鬆症の程度や、痛みの有無、筋力の状態は人それぞれです。マンツーマンやセミパーソナルのレッスンでは、無理のない負荷を一緒に見つけながら進めていくことができます。

日常でできる習慣
- たんぱく質を意識した食事:肉・魚・卵・大豆製品などを、毎食バランスよく摂る意識を持ちましょう。年齢とともにたんぱく質の吸収・合成効率は下がりやすいため、若い頃より少し多めを意識するくらいがちょうど良いこともあります。
- カルシウム・ビタミンDを補う:乳製品や小魚、きのこ類、適度な日光浴を日常に取り入れましょう。
- こまめに立つ・歩く:座りっぱなしの時間を減らし、日常の中で身体を動かす機会を増やしましょう。
- 転倒予防の環境づくり:段差や滑りやすい床、暗い廊下など、自宅の中の転倒リスクを見直すことも大切です。
- 無理のない範囲で継続する:一度にたくさん行うより、少しずつでも継続することが、筋肉にも骨にも効果的です。
- 定期的な検査を受ける:骨密度検査や体組成測定など、数値で状態を把握しておくことで、変化に早く気づくことができます。
こんな方は、特にチェックしてみてください
- 健康診断で骨密度の低下、または筋肉量の減少を指摘されたことがある
- 歩くスピードが以前より遅くなったと感じる
- ペットボトルの蓋を開けるなど、握る力の弱さを感じる
- 転倒への不安から、外出や活動量が減った
- 椅子からの立ち上がりに、以前より力が必要になった
- ケガや病気で長期間安静にしていた期間がある
一つでも当てはまる方は、筋肉と骨、両方の視点から身体を見直してみる価値があります。
まとめ
サルコペニアと骨粗鬆症は、それぞれ別の変化に見えて、力学的な刺激を介して互いに影響し合いながら進んでいくことが分かっています。どちらか一方だけでなく、両方を同時にケアする視点を持つことが、これからの身体づくりにおいて大切です。
- 筋肉に適切な負荷をかける ── 抵抗運動を安全な範囲で継続する
- 骨に適切な刺激を与える ── 荷重運動を日常に取り入れる
- 栄養で土台を支える ── たんぱく質・カルシウム・ビタミンDを意識する
自覚症状が乏しいまま進みやすい変化だからこそ、「なんとなく」で済ませず、早めに向き合うことが将来の自分を守ることにつながります。心当たりのある方は、まずは体験レッスンで、いまのご自身の筋肉・骨・バランスの状態を確認してみませんか。理学療法士としての視点から、無理のない一歩をご提案します。ご予約・ご相談は、このページ下部の「スタジオ一覧・ご予約」から、公式LINEでお気軽にどうぞ。
(※ 骨粗鬆症やサルコペニアの診断を受けている方は、必ず主治医・理学療法士の指示のもとで運動を行ってください。この記事は一般的な情報提供であり、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。)



