── 「運動したほうがいい」のは分かっていても、何をすればいいか分からない方へ
こんにちは。西宮/東京港区にあるマシンピラティス専門スタジオ「heso pilates」でインストラクターをしているJacquinです。健康診断や整形外科で骨密度の低下、骨粗鬆症を指摘された方から、こんなお声をよくいただきます。
- 「運動したほうがいいと言われたけど、何をすればいいのか分かりません」
- 「前屈やひねる動きが、なんとなく怖いです」
- 「ヨガや体操教室に通っているけど、これを続けて大丈夫か不安です」
- 「骨密度の数値を見ても、正直どれくらい深刻なのか分かりません」
骨粗鬆症は、「運動したほうがいい」ことは広く知られていますが、「具体的にどんな動きが安全で、どんな動きに注意が必要か」については、意外と知られていません。今日は、骨粗鬆症の診断の見方と、避けたい動き・取り入れたい運動の考え方を、理学療法士の視点から整理してお話しします。
骨粗鬆症は、どうやって診断されるのか
骨粗鬆症の診断には、主に DEXA(デキサ)法という骨密度測定が使われます。結果は「T-スコア」という数値で示され、若年成人の平均的な骨密度と比べて、どれくらい低いかを表します。おおまかな目安として、T-スコアがマイナス2.5以下になると骨粗鬆症、マイナス1.0からマイナス2.5の間は骨量減少(骨粗鬆症の前段階)とされます。
骨粗鬆症には、大きく分けて2つのタイプがあります。
- 原発性骨粗鬆症:加齢や閉経に伴うホルモン変化が主な原因となるタイプ。骨粗鬆症の多くはこちらに分類されます。
- 続発性骨粗鬆症:特定の病気(甲状腺や副甲状腺の疾患など)や、ステロイドなどの薬剤の影響で起こるタイプ。

ご自身がどちらのタイプで、どの程度の数値なのかを把握しておくことは、運動の強度や注意点を考えるうえでの土台になります。数値の意味が分からない場合は、遠慮せずに主治医に確認してみてください。
また、骨密度の数値だけでなく、過去に骨折をしたことがあるかどうかも、重要な判断材料になります。特に、強い衝撃がなかったにもかかわらず起きた骨折(脆弱性骨折)がある場合は、数値以上にリスクが高いと考えられることがあります。健康診断で「骨量減少」と言われたまま、特に何もしていないという方も多いのですが、この段階から運動の内容を見直しておくことには、大きな意味があります。
なぜ「前屈」や「ひねり」に注意が必要なのか
骨粗鬆症がある方の運動で、特によく話題になるのが「前屈」と「ひねり」の動きです。これには、骨の構造的な理由があります。
背骨の骨(椎体)は、前方がやや柱状になっています。背中を丸めて前に倒れる動き(脊柱の屈曲)をすると、椎体の前方に圧縮する力が集中しやすくなります。骨密度が十分であれば問題にならない負荷でも、骨がもろくなっている状態では、この圧縮力によって椎体がつぶれるように骨折してしまうことがあります。これを「椎体圧迫骨折」と呼びます。
さらに、前屈にひねりの動きが加わると、椎体にかかる力の向きが複雑になり、骨折のリスクがさらに高まると考えられています。いわゆる「ぎっくり腰」のような強い衝撃がなくても、前かがみで物を持ち上げる、顔を洗うときに深く前屈する、といった日常のなにげない動作の中で、気づかないうちに骨折が起きていることもあります。
一般的なヨガや体操、フィットネスのプログラムの中には、前屈やひねりを伴うポーズ・エクササイズが数多く含まれています。それ自体が「絶対にいけない」わけではありませんが、骨粗鬆症の状態によっては、動きの選び方に配慮が必要になる場合がある、という点を知っておいていただきたいと思います。
では、どんな運動が勧められているのか
骨粗鬆症の運動療法では、一般的に次のような視点が大切にされています。
- 背骨をまっすぐ、または伸ばす方向の動き(伸展)を中心に選ぶ:背中を丸める動きよりも、背筋を伸ばす・胸を開く方向の動きを中心に取り入れることが推奨されています。
- 荷重運動を安全な範囲で取り入れる:以前の記事でもお話しした通り、体重を支える負荷は骨を作る刺激になります。立位でのエクササイズや、ウォーキングなどが代表的です。
- バランス・姿勢保持の練習:転倒そのものを防ぐことが、骨折予防の大前提になります。
- 筋力、特に背筋の強化:背中側の筋肉を強化することで、姿勢を支える力を高め、椎体への負担を分散させやすくなります。
ポイントは、「骨に優しい負荷」と「骨折につながりやすい動き」を見分けて、運動を組み立てることです。
食事や生活習慣も、骨づくりの土台になる
運動と合わせて知っておきたいのが、骨の材料そのものを整える食事や生活習慣です。カルシウムはもちろんですが、カルシウムの吸収を助けるビタミンDや、骨の土台となるたんぱく質も欠かせません。ビタミンDは食事からだけでなく、日光を浴びることで皮膚でも作られるため、適度に外に出て日光を浴びる時間を持つことも、運動と並んで大切な習慣のひとつです。
喫煙や過度な飲酒が骨密度の低下と関連することも、広く知られています。すでに習慣になっている方にとってすぐに変えるのは簡単ではありませんが、「骨を守る」という視点から、少しずつ見直すきっかけにしていただければと思います。

ピラティスでの配慮 ── 骨粗鬆症に合わせた動きの選び方
STOTT PILATES®には、骨粗鬆症をお持ちの方に向けたプログラム設計の考え方があります。私自身、骨粗鬆症に特化した専門コースを教える立場でもあり、この視点を日々のレッスンに取り入れています。
- 前屈を伴う種目を避ける、または修正する:一般的なピラティスのマットワークには前屈を伴う種目もありますが、骨密度の状態に応じて、同じ目的を達成できる別の動きに置き換えます。
- ひねりの強度を調整する:ひねる動きそのものを完全に避けるというより、支えのある姿勢で、安全な可動域の中で行うよう調整します。
- 伸展方向の動きを多く取り入れる:背筋を使って姿勢を伸ばす方向のエクササイズを中心に組み立てます。
- マシンを使った安全な荷重練習:リフォーマーなどのマシンを使うことで、立位での荷重練習を、支えのある安全な環境で行うことができます。
- 日常動作への橋渡し:物を拾う、靴下を履くといった日常動作を、背骨を丸めずに行う方法も、レッスンの中で練習します。

骨粗鬆症があるからといって、運動をやめる必要はありません。むしろ、正しい動きの選び方を知ることで、安全に、かつ効果的に身体を守っていくことができます。
実際のレッスンでは、骨密度の状態や骨折歴、普段の活動量などを伺ったうえで、お一人おひとりに合わせてエクササイズを選んでいきます。同じ「骨粗鬆症」という診断名でも、適した運動の内容は人によって異なります。だからこそ、自己流で始める前に、専門知識を持った指導者のもとで、ご自身の状態に合った動き方を確認していただきたいのです。
日常生活で気をつけたいこと
- 物を拾うときは、腰からではなく股関節を曲げて:前かがみで背中を丸めるのではなく、股関節を曲げてしゃがむ動作を習慣にしましょう。
- くしゃみ・咳のときも姿勢を意識する:強く前かがみになる代わりに、背筋を保ったまま行うよう意識してみましょう。
- 重い荷物は身体に近づけて持つ:腕だけで遠くのものを持ち上げようとせず、身体の近くで支えるようにしましょう。
- 滑りやすい場所、段差に注意する:転倒そのものを防ぐ環境づくりが、骨折予防の基本です。
- 自己流の体操やヨガは、内容を確認してから:前屈やひねりを多く含むプログラムに取り組む場合は、事前に主治医や理学療法士に相談しておくと安心です。
こんな方は、特にチェックしてみてください
- 骨密度検査でT-スコアがマイナス2.5以下、または骨量減少を指摘されたことがある
- ヨガや体操教室に通っているが、前屈やひねりの動きに不安がある
- 背中が丸くなってきた、身長が縮んだと感じる
- 強い衝撃がないのに、背中や腰に痛みを感じたことがある
- 家族に骨粗鬆症や骨折の既往がある
一つでも当てはまる方は、運動の内容そのものを見直すタイミングかもしれません。
よくある疑問 ── 「もう遅い」ということはない
「若いころからもっと運動しておけばよかった」「今さら始めても意味があるのか」というお声も、よく伺います。ですが、骨は生きている組織であり、何歳からでも、適切な負荷をかければ応答してくれます。もちろん、既に骨密度がかなり低下している場合や、椎体骨折の既往がある場合は、より慎重な配慮が必要になりますが、「もう遅いから何もしない」という選択が、最もリスクを高めてしまいます。大切なのは、今の状態に合った一歩を、今日から始めることです。
また、「ピラティスは柔らかい動きが多いイメージがあるけれど、骨粗鬆症があっても本当に大丈夫なのか」と心配される方もいらっしゃいます。ピラティスは本来、エクササイズの種類も強度の幅も非常に広いメソッドです。マシンを使えば、立位での荷重や筋力強化を、転倒のリスクなく安全な環境で行うことができますし、マットワークであっても、動きを選び、修正を加えることで、骨粗鬆症の方にも適したプログラムを組むことができます。
まとめ|骨粗鬆症と診断されたら ── 避けたい動き、取り入れたい運動
骨粗鬆症と診断されても、運動をやめる必要はありません。大切なのは、「何を避け、何を取り入れるか」を知ったうえで、安全に身体を動かし続けることです。
- 自分の診断内容を理解する ── T-スコアやタイプを把握し、主治医に不明点を確認する
- 前屈・ひねりの動きには配慮する ── 椎体への圧縮力を避け、伸展方向の動きを中心に選ぶ
- 荷重運動と筋力強化を、安全な環境で継続する ── マシンなどを活用し、無理のない範囲で続ける
骨粗鬆症があっても、正しい知識とともに身体を動かし続けることで、将来の骨折リスクを減らしていくことができます。心当たりのある方は、まずは体験レッスンで、いまのご自身の状態に合わせた動き方を確認してみませんか。理学療法士としての視点から、無理のない一歩をご提案します。ご予約・ご相談は、このページ下部の「スタジオ一覧・ご予約」から、公式LINEでお気軽にどうぞ。
(※ 骨粗鬆症の診断を受けている方は、運動の種類や強度について、必ず主治医の指示・許可に従ってください。この記事は一般的な情報提供であり、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。)
── Jacquin(理学療法士/STOTT PILATES® 認定リードインストラクタートレーナー)



