「なんとなく不調」の裏にある、身体の変化を知ることから
こんにちは。西宮/東京港区にあるマシンピラティス専門スタジオ「heso pilates」でインストラクターをしているJacquinです。40代・50代のお客様から、こんなお声をよくいただきます。
「健康診断で、骨密度が下がっていると言われました」
「最近、姿勢が丸くなってきた気がします」
「急に暑くなったり、夜眠れなかったり、理由もなくイライラします」
「若い頃と同じ運動をしているのに、なんだか身体がついてきません」
「これって年のせいなのか、何か対策できることなのか分かりません」
これらは、ばらばらの不調に見えて、実は更年期という一つの身体の変化が背景にあることが少なくありません。それぞれを個別の「困りごと」として我慢したり、諦めたりしてしまう方も多いのですが、身体の中で何が起きているかを知ると、対処できることが意外と多いと分かります。今日は、更年期に起こる「骨密度」「姿勢」「自律神経」の変化と、ピラティスでできることを、理学療法士の視点からお話しします。
更年期に起こる、3つの変化
更年期は、閉経の前後数年間を指し、卵巣機能が徐々に低下し、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減っていく時期です。このホルモンの変化は、身体のさまざまな場所に影響を及ぼします。中でも、日常生活に関わりが深いのが次の3つです。
- 骨密度の低下 ── エストロゲンには骨の代謝を保つ働きがあり、減少すると骨が弱くなりやすくなる
- 姿勢の変化 ── 筋肉量の減少や、背骨まわりの変化により、丸まった姿勢になりやすくなる
- 自律神経の乱れ ── のぼせ(ホットフラッシュ)、不眠、気分の浮き沈みなどが起こりやすくなる

これらは互いに無関係ではありません。姿勢が丸まると呼吸が浅くなり、自律神経のバランスにも影響します。自律神経が乱れて眠りが浅くなると、疲労が抜けにくくなり、身体を動かす意欲も落ちてしまいます。一つの変化が、また別の変化を呼び込みやすいのが、更年期という時期の特徴でもあります。一つずつ、身体の中で何が起きているのかを見ていきましょう。
骨密度の低下 ── なぜ更年期に骨がもろくなるのか
骨は、常に古い組織が壊され、新しい組織が作られる「骨代謝」を繰り返しています。エストロゲンには、この骨を壊す働き(骨吸収)を抑える役割があります。更年期でエストロゲンが減少すると、骨を壊す働きが骨を作る働きを上回りやすくなり、骨密度が低下しやすくなります。実際、閉経後の数年間は、女性の骨密度が特に急速に低下しやすい時期であることが知られています。
骨密度の低下は自覚症状がほとんどないまま進むため、「気づいたら骨粗鬆症と診断されていた」という方も少なくありません。ただし、骨は運動による刺激、特に体重を支えるような負荷(荷重運動)によって、骨を作る働きが刺激されることが分かっています。骨は、負荷がかかる方向・強さに応じて自らを作り替える性質を持っており、これを「ウォルフの法則」と呼びます。適切な負荷を、安全な範囲でかけ続けることが、骨密度を守るための大切なポイントです。
姿勢の変化 ── 丸まった姿勢になりやすい理由
更年期になると、全身の筋肉量が少しずつ減少しやすくなります(サルコペニア)。特に、背筋を伸ばして姿勢を保つ役割を担う背中側の筋肉(脊柱起立筋や多裂筋など)が弱くなると、重力に負けて背中が丸まりやすくなります。
さらに、骨密度の低下が進むと、背骨の椎体そのものが変形しやすくなることもあり、これも姿勢の変化に関わってきます。丸まった姿勢は見た目の印象だけでなく、呼吸が浅くなる、肩や首に余計な負担がかかる、消化器官が圧迫されるなど、身体全体の使い方にも影響します。
以前の記事でお話しした肩甲骨や首の緊張パターンも、この姿勢の変化と無関係ではありません。背中が丸まると、肩甲骨が正しい位置で安定しにくくなり、肩こりや首の張りにもつながりやすくなります。「かばう」「使わない」という積み重ねが悪循環を生むのは、これまでの記事でお話ししてきた通りですが、更年期の姿勢変化も、早い段階で気づき、背中側の筋肉を意識的に使うことで、進行を穏やかにできる可能性があります。
自律神経の乱れ ── のぼせ・不眠・気分の変化
エストロゲンは、自律神経の働きを調整する脳の視床下部にも影響を及ぼします。そのため、更年期にはエストロゲンの変動に伴い、自律神経のバランスが崩れやすくなり、のぼせ・発汗・動悸・不眠・気分の浮き沈みといった症状が現れやすくなります。
これらの症状は「気持ちの問題」と誤解されがちですが、ホルモンバランスの変化という、身体の側に起こっている自然な反応です。自律神経は、呼吸や姿勢とも深く関わっており、浅い呼吸や緊張した姿勢が続くと、交感神経が優位な状態が続きやすくなり、症状がさらに強く感じられることもあります。逆に言えば、呼吸や姿勢を整えることは、自律神経のバランスにアプローチできる、数少ない「自分でコントロールできる部分」でもあります。
ピラティスでできること
骨密度・姿勢・自律神経、それぞれに対して、ピラティスは次のようなアプローチができます。
- 適切な負荷での荷重運動:リフォーマーなどのマシンを使うことで、関節への負担を抑えながら、骨に適切な刺激を与える運動を安全に行うことができます。無理な負荷ではなく、その方の骨・関節の状態に合わせた負荷設定が大切です。立位でのエクササイズや、足で機械のバネの抵抗を押し返す動きなど、骨に軸方向の負荷がかかる種目を選びながら進めます。
- 姿勢を支える筋肉の再教育:背中側の筋肉、特に脊柱を支えるインナーマッスルを丁寧に働かせる練習を通じて、丸まった姿勢を内側から支える力を取り戻していきます。うつ伏せや四つ這いでの背筋強化、胸を開く動きなどを組み合わせていきます。
- 呼吸を通じた自律神経へのアプローチ:STOTT PILATES®の胸郭呼吸は、深くゆっくりとした呼吸を通じて、副交感神経を優位にしやすくすることが期待できます。呼吸と動きを合わせる練習そのものが、自律神経を整える時間になります。レッスンの最初と最後に、意識的に呼吸だけに集中する時間を設けることも効果的です。
- 無理のない負荷設定:更年期の身体は、若い頃と同じペースで負荷をかけると、かえって疲労が抜けにくくなることがあります。その日の体調に合わせて負荷を調整しながら、継続できるペースを一緒に見つけていきます。ホットフラッシュや動悸を感じやすい方には、強度よりも呼吸と連動性を重視したメニューを選びます。
日常でできる習慣
- 軽い荷重運動を日常に取り入れる:ウォーキングや階段昇降など、体重を支える動きを日常的に取り入れることも、骨密度を守るうえで有効です。エレベーターの代わりに階段を使うなど、小さな積み重ねで構いません。
- カルシウム・ビタミンDを意識した食事:骨の材料となる栄養素を、日々の食事の中で意識してみましょう。乳製品や小魚、きのこ類、適度な日光浴もビタミンDの生成に役立ちます。
- 姿勢を定期的にリセットする:デスクワークや家事の合間に、胸を開き、背筋を伸ばす小さな動きを取り入れましょう。1時間に一度のペースが目安です。
- 就寝前のリラックス習慣:深呼吸や軽いストレッチで、副交感神経が優位になりやすい状態を作ってから眠ることで、睡眠の質をサポートできます。
- のぼせや動悸を感じたときの対処:無理に我慢せず、深くゆっくりとした呼吸を意識するだけでも、症状が和らぐことがあります。
- 無理をしすぎない:体調の波がある時期だからこそ、その日の調子に合わせて運動量を調整する柔軟さも大切です。「今日は少し軽めに」という選択も、立派なセルフケアです。
こんな方は、特にチェックしてみてください
- 健康診断で骨密度の低下を指摘されたことがある
- 最近、姿勢が丸くなってきたと感じる
- のぼせ・発汗・不眠・気分の浮き沈みなどを感じることが増えた
- 以前と同じ運動をしていても、疲れが抜けにくくなった
- 呼吸が浅くなっている気がする
- 家族や周囲から「姿勢が変わった」と言われたことがある
一つでも当てはまる方は、骨密度・姿勢・自律神経という3つの視点から、身体を見直してみる価値があります。
=まとめ= 更年期とピラティス ── 骨密度・姿勢・自律神経、まとめて整える
更年期に起こる「なんとなくの不調」は、骨密度・姿勢・自律神経という、それぞれ違う身体のしくみの変化が重なって起きていることがあります。年齢のせいだと諦めてしまう前に、身体の中で何が起きているのかを知ることが、対処への第一歩になります。
大切なのは、これらを一つずつ切り離して対処するのではなく、身体全体のつながりとして捉えることです。
- 骨に適切な負荷をかける ── 安全な範囲での荷重運動を継続する
- 姿勢を支える力を取り戻す ── 背中側のインナーマッスルを丁寧に働かせる
- 呼吸で自律神経を整える ── ゆっくりとした呼吸を、日常の中に取り入れる
どれも、一気に変えようとする必要はありません。ご自身の体調やペースに合わせて、少しずつ取り組んでいただければと思います。更年期は誰もが通る自然な過程であり、身体との付き合い方を見直す良いタイミングでもあります。
心当たりのある方は、まずは体験レッスンで、いまのご自身の骨・姿勢・呼吸の状態を確認してみませんか。理学療法士としての視点から、無理のない一歩をご提案します。ご予約・ご相談は、このページ下部の「スタジオ一覧・ご予約」から、公式LINEでお気軽にどうぞ。
(※ 骨粗鬆症の診断を受けている方や、強い症状がある場合は、必ず主治医にご相談のうえ、運動の可否や内容についてご確認ください。この記事は一般的な情報提供であり、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。)



