整形を否定したいわけではありません。知っておいてほしいリスクがあります
こんにちは。こんにちは。西宮/東京港区にあるマシンピラティス専門スタジオ「heso pilates」でインストラクターをしているJacquinです。
ピラティスインストラクターから、よくこんな質問をよく受けます。
「美容整形をすると、身体のコントロールって変わるんですか?」
結論からお伝えします。多くの場合、少なからず影響します。
これは、美容整形そのものを否定するためにお話しするのではありません。整形を選ぶかどうかは、それぞれの方の自由な選択です。ただ、身体を診る専門家として、「こういうリスクがあることは知っておいてほしい」という思いで、今日はこのテーマを取り上げます。美容整形には、豊胸、脂肪吸引、フェイスリフト、ボトックス、糸リフトなど、実にさまざまな種類があります。「胸の施術だから胸だけ」「顔の施術だから顔だけ」と思われがちですが、実際には身体は一つのつながったシステムとして働いているため、影響が思わぬ場所にまで及ぶことがあります。
もちろん、整形のあとに身体の不調を感じている方、動きを良くしたい方にとって、ピラティスは相性の良いアプローチです。ただし、整形をしていない方に比べると、改善までに時間や労力が余分にかかることが多い、ということも、あわせて知っておいていただきたいポイントです。
まず、筋膜を体感してみましょう
整形と身体の動きのつながりを理解するために、簡単な実験をしてみましょう。
胸のあたりの服を、少し前に引っ張ってみてください。どこにストレスを感じますか? 背中のあたりが、少し引っ張られる感覚はありませんか?
これが、筋膜のつながりです。筋膜は、身体のある部分が硬くなったり引っ張られたりすると、その影響が周囲の組織、特に反対側にも伝わっていく性質を持っています。筋膜は全身を覆う一枚のネットワークのようなもので、筋肉同士や皮膚、内臓までもゆるやかにつなぎ合わせています。そのため、ある一点に変化が生まれると、そこだけにとどまらず、つながっている先へと影響が波及していきやすいのです。胸のあたりに人工物(インプラントなど)が入ることで、その部分の組織が引っ張られると、つながっている背中側の筋膜にも影響が及びやすくなる ── そう考えていただくと、イメージしやすいかと思います。
傷跡と癒着が、身体を引っ張る
このつながりが生まれるのは、豊胸や脂肪吸引といった美容整形に限った話ではありません。心臓の手術や、乳がんの手術など、胸の前面を切開する手術のあとには、傷跡が残ります。傷跡は、治っていく過程で周囲の組織と癒着し、その組織を引っ張る方向に力がかかりやすくなります。
これは、先ほどの「服を引っ張る」実験と、よく似た状態です。もう一度、服を引っ張ってみてください。今度は、服をひねりながら、さらに強く引っ張ってみましょう。すると、背中だけでなく、首や腰のあたりまで、引っ張られる感覚が広がっていくのではないでしょうか。
これこそが、術後の方の身体が硬くなりやすい、あるいは不調が出やすい理由の一つです。傷跡による組織の引っ張りは、その部位だけにとどまらず、離れた場所の動きにも影響を及ぼしていきます。
この影響、ずっと戻らないの?
「では、影響を受けた筋膜は、もう一生硬いままなのでしょうか?」
正直にお答えすると、「正しく動かせていない状態が続く限り、自然には戻りにくい」というのが実感です。それどころか、多くの場合、少しずつ悪化していく傾向があります。
ピラティスを続けている方には、感覚的に分かりやすい話かもしれません。身体は、動かしやすい、柔らかいところから優先的に動こうとする性質があります。胸椎(背骨の胸のあたり)が硬い方は、代わりに首や腰を余分に動かして代償します。股関節が硬い方は、腰や膝で代償しようとします。この「代償するクセ」が積み重なることで、本来動くべき場所がますます動かなくなり、代わりに動いている場所への負担がどんどん増えていく ── という悪循環が生まれます。
整形によって筋膜への影響が加わった状態でも、同じことが起こります。むしろ、この代償のパターンに気づかないまま過ごしてしまうと、身体はさらに硬くなっていきやすいのです。普段の生活の中では、こうした代償はなかなか自覚しにくいものです。だからこそ、専門家と一緒に、いま自分の身体がどこをかばい、どこで代償しているのかを確認する機会を持つことが、回復への大切な一歩になります。
顔の整形も、身体の動きに関わる?
「顔の整形なら、身体の動きには関係ないのでは?」と思われるかもしれません。ですが、顔は非常に繊細な部位で、固有受容器(身体の位置や動きを感知するセンサー)が数多く集まっています。また、顔の筋膜は、首、さらには足元までつながっていることが分かっています。
施術の種類によって、影響の大きさは異なります。
- 切開を伴うフェイスリフト:皮膚を切開し、たるみの原因となる内部の筋膜をしっかりと引き上げる施術のため、筋膜が引っ張られた状態が続きやすく、首まわりや肩まわりへの影響も出やすくなります。
- ボトックス:注射した部位の神経の働きを一時的にブロックし、筋肉の動きを抑える施術です。ある筋肉があまり動かなくなることで、周囲の筋肉の使われ方にも影響が及ぶことがあります。
- 糸リフト・ヒアルロン酸:切開を伴う施術に比べると、身体への影響は小さいと考えられます。ただし、先ほどお話しした固有受容器の存在を踏まえると、「異物が入った」という感覚が脳に伝わる以上、影響がまったくのゼロとは言い切れません。
いずれの施術も、影響の大きさには個人差があります。「絶対にこうなる」と一律に決めつけることはできませんが、身体は一つのつながったシステムとして働いているため、どこかに変化が加われば、他の部分にも何らかの形で波及しうる、という視点を持っておくことが大切です。
整形のあと、いつからピラティスを始められる?
これは、医学的な手術である以上、運動を再開できる時期は、施術の内容やその方の状態によって個人差があります。自己判断で進めるのではなく、必ず担当の医師に確認していただきたいポイントです。
- ピラティスを始めても良い時期はいつか
- 避けたほうが良い姿勢や動きはあるか
これらを事前に確認したうえで、運動制限がなければ、いつからでも始めることができます。医師の許可を得ることは、安全に身体と向き合っていくための、欠かせないステップです。
整形後の「首がこる」「起き上がれない」は、身体の再教育で整えられる
整形のあと、「首が急にこるようになった」「ベッドから起き上がりにくくなった」という声を聞くことがあります。これは、他の外科手術と同じ原理で説明できます。皮膚を切る、組織に手を加える ── どんな治療であっても、身体にとってはある種の「侵害(刺激)」として扱われます。
この侵害刺激によって、身体を守ろうとする反応が働き、筋肉の使われ方が変化することがあります。中でもよく見られるのが、コアマッスル(体幹を支えるインナーマッスル)が一時的に働きにくくなる状態です。コアマッスルがうまく働かないと、身体は他の筋肉で無理やりカバーしようとし、その代償が積み重なることで、痛みや不調がじわじわと増えていきます。
だからこそ、ピラティスはこうした状態にぴったりのアプローチだと考えています。コアマッスルを含めた身体の使い方そのものを、丁寧に再教育していくことで、気づかないうちに痛みや不調が和らいでいく ── これが、ピラティスが術後のケアとして選ばれる理由です。
ピラティスでできること
美容整形後の身体に対して、ピラティスでは次のような視点でアプローチします。
- 癒着した筋膜の動きを丁寧に確認する:どの部位が引っ張られ、どの部位が代償しているのかを、姿勢や動きの中から見極めます。
- 代償動作のクセに気づく練習:硬くなりやすい場所を無理に動かそうとするのではなく、まずは代償が起きている場所に気づくことから始めます。
- コアマッスルの働きを取り戻す:小さな動きから、体幹を支える筋肉を丁寧に働かせる練習を積み重ねます。
- 医師の許可の範囲内で、段階的に負荷を上げる:無理のないペースで、安全に動ける範囲を少しずつ広げていきます。
冒頭でお伝えした通り、整形をされていない方に比べると、変化を実感するまでに時間や回数が余分にかかることが多いのも事実です。ただ、正しい動かし方を積み重ねていくことで、身体は着実に変わっていきます。
まとめ
美容整形は、身体のごく一部だけに影響する「独立した施術」ではなく、筋膜のつながりを通じて、離れた部位の動きにも影響を及ぼす可能性があります。これは、整形を否定するための話ではなく、「知っておくことで、術後の身体とより上手に付き合っていける」という視点でお伝えしています。
大切なのは、整形をした・しないにかかわらず、いま自分の身体がどう動いているかに関心を持つことです。
- 筋膜のつながりを知る ── 一つの部位への影響が、離れた場所にも波及しうることを理解する
- 代償動作に気づく ── どこをかばい、どこで無理をしているかを、専門家と一緒に確認する
- 医師の許可のもとで、身体を再教育する ── コアマッスルの働きを取り戻しながら、段階的に整えていく
もし整形後に、首や肩のこわばり、姿勢の変化、原因のわからない不調を感じている方がいらっしゃれば、まずは担当医師に運動の可否を確認したうえで、身体の再教育としてピラティスを取り入れてみませんか。焦らず、ご自身の身体のペースに合わせて、一緒に整えていきましょう。
心当たりのある方は、まずは体験レッスンで、いまのご自身の身体の状態を確認してみませんか。理学療法士としての視点から、無理のない一歩をご提案します。ご予約・ご相談は、このページ下部の「スタジオ一覧・ご予約」から、公式LINEでお気軽にどうぞ。
(※ 整形後の運動再開の時期や内容は、必ず担当医師の指示・許可に従ってください。この記事は一般的な情報提供であり、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。)



